第二章・ここからは動けない

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入って気づいたが、隣から何かトントンという音が聞こえてきている。 まるでいつも聴いているかのような心地の良いリズムで、あまりに私の中に馴染みすぎていて気づかなかったのだと思う。 音につられて隣を見るとそこには緑のフェンスが張られていて、向こうにはしっかりとしたゴム床の屋外バスケの練習場があった。 そこには一人、必死に、でも楽しそうにボールをつく、やけに見覚えのある影があった。 あれ、もしや富谷君ではないか? 何か見覚えがあると思ったら富谷君だったのか。 邪魔するのもいけないのでそのままベンチへ向かうことにした。 一歩を踏み出したつもりが、クッ、っと何かに引っ張られる感覚がした途端、 ガシャン!! バランスを崩して、フェンスに背中をぶつけたのが分かった。 どうやら、トートバッグのヒモがフェンスの扉に引っかかってしまっていたようだった。 いそいそと立ち上がった後、ボールをつく音が止んでいることに気づいた。 まずい、邪魔をしてしまった。 後ろを振り返ると、 私を驚いた顔で見つめる富谷君がいた。
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