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「これだけいい点数取ってたら、お小遣い増えるんじゃない?」
「夕実。残念だけど、うちは給料制じゃないんだ」
「……お手伝い一回につき……だっけ」
「そう!しかも一回十円!安い!中学生の息子に厳しすぎない!?」
「……そう、ね」
この浩太の両親だ。想像はつくと思うが、別に勉強を強制的にやらせるような教育家庭ではない。
むしろ、自由主義な感じで二人とも明るくて活発。夕実も何度もお世話になったことがあるが、本当に幸せそうな家庭だと思う。
浩太はそのお小遣い制度のおかげか家事が得意。お風呂掃除、洗濯、夕飯作り、掃除など、これらを一回する度に十円。
ほとんど浩太がやっているので、言うほど浩太はお金に困ってはいない。
しかし、友達の大半が一か月に一定の金額を貰っているというのでそれに憧れがあるのだ。
「まぁ、お金がそこまでしてほしいわけじゃないけど」
「そうね」
「いつか夢を取りに行くためだからさ」
「まだ、言ってるのね」
「いつまでも言うよ」
「あっ、そう」
「一緒に行けたらよかったな」
「そうかな」
「そうだよ」
「いつか別れる日はくるんだよ」
「くるんだよなぁ」
浩太は道端に落ちている小石を蹴った。それは軌道を変えて芝生の方へと行ってしまった。
それを見た夕実は少しだけ笑って「ダメだね」と呟いた。
その言葉に浩太は振り返り、「ダメだった」と眉を下げて笑った。
西へと吸い込まれていく夕日が二人の影を伸ばす。
振り向いた浩太の顔に影が差し、夕実の顔には光がさす。
眩しすぎて、浩太を見ることが出来なくなってた。
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