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「好きにしたら」
「好きにするよ」
「早く取ってきてね。ゆみが答えをわすれる前に」
「とってくるよ。絶対」
「ホント?」
「ホント」
二人は笑った。空も笑っていた。
笑いあう二人の前に飛行機が現れた。それは、地面へと墜落した紙で出来た飛行機だった。
「これ、さっきこうたがとばしたやつじゃん」
「ほんとだ。ここまでとんでたんだ」
「今日はたくさんとんだね」
「ゆみのは?」
「……また川にながされたんじゃない?」
「また?」
「また」
少年――こうたは落ちていた紙飛行機を拾った。そこには自分が書いた文字もしっかりあったので、こうたのもので間違いなさそうであった。
二人は紙飛行機に夢を書いて、帰り道たびたび飛ばすのが好きだった。主に好きなのはこうただが、ゆみもどこか楽しみにしていたりしている。
するとこうたが突然「あああ!!」と何かに気付いたように声を上げた。
「どうしたの」
「てか、これにゆみの夢書いてあるよね!?ゆみ、夢あるじゃん!」
「……ホント、馬鹿だよね。こうたって」
うーっと頭を唸っているこうたに対して、ゆみはジト目で見る。まあ、そこがこうたらしいといえば、そうなのだが。
「あとさ」
「なにぃー」
「ランドセル、あいてるよ」
「早く言ってよ!」
帰る時からあいていたのだが、わざわざ指摘するものではないと判断していたが、やはり気になるものだ。
プランプランと揺れるランドセルの先をこうたがランドセルを背負ったまま一生懸命捕まえようとしているのを見て、ゆみは溜息をつきつつ、「ランドセル一回下ろせばいいのに」と思わずにはいられなかった。
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