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「いやー、今日も飛んだなー」
「そうだね」
「まあ、風に助けられたとこもあるけど」
「……ホント、好きだね」
「まあな!」
満足そうに笑った浩太は、自分が飛ばした紙飛行機を拾った小学生が、それで遊んでいる様子を見た。
自分が作ったものがああやって喜ばれるのは嬉しいものだ。
その隣を歩く夕実は、小さく溜息をついた。
それに気付いたのかどうか、浩太は夕実の方を見た。
「でもさ、樹さんのお腹の上に乗るなんて!すっげぇ、偶然!」
「ホントにね。それで起こしちゃったけど」
「まー、それは悪いけどさー」
「割とあるから、いいんじゃない?」
「反省しろって事じゃないの?」
「他の人だったらね。でも、樹さんはわかってくれてるでしょ?」
「いい人だもんな!」
「いい人だね」
小学生の期間中ずっとこの道を通ってきたがこの芝生で寝ているのは樹という青年だけではなかった。しかし、もっとも多く会ったのは樹であり、二人も樹の事はまあまあ知っているつもりだった。
寝ていると言っても、樹の場合は川の音などを楽しみながら休むというのが好きなようで熟睡をしているわけではないらしい。そのため、少しのことでもすぐに目は覚める。樹にとって芝生の上で休むというのはそういうこと含めてであり、紙飛行機が飛んで来たり、小学生の少年に話しかけられる事は別に苦でもなんでもない。
もちろん他の人も理解は示してくれるが、樹以上の者は中々いなかった。
「でも、また飛ばしたんだね」
「うん? いつも、飛ばしてるじゃん」
「テスト」
「あーー、まあな」
いつもはただの紙をただ折って飛ばしているのだが、たまに浩太は自分のテスト用紙を折って飛ばしてしまう。
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