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指摘されて、少し罰が悪そうにするかと思われたが、横の男は普通にポリポリと頬をかいている。
「どうして飛ばしたの」
「どうしてって……」
「百点満点だったんでしょ?」
「まー、そうだけどさ」
点数が悪くて飛ばしている訳ではなかった。逆に点数が良すぎる……百点のテストを浩太は飛行機にして飛ばしてしまう。
しかし、九十九点など、百点を逃したものに対してはバッグの中に眠っている。それが、大事に扱われているかは別としても。
「俺さ、満点と0点のテストは別に必要ないと思うんだよな」
「それは私に対する嫌み?」
「そうじゃないって。だって、満点だったら復習いらないし、逆に0点だったら全部復習すればいいし」
「そう」
「夕実だって、そう思わない?」
「言われればね」
「だろ?」
夕実は少し悩んだように俯きがちだったが、その返答に浩太は満足そうだ。
今回のテストでは満点を取ったのは一つだけだったらしく、飛行機となったのは一機のみだった。
その誰もが羨む紙切れは、姿を変え、小学生の手のうちだ。彼らも中身を見て、内容は知っているようだが気にしないことにしたのか、そのまま遊んでいる。
「でもね」
「何?」
「浩太が0点なんてとったことあるっけ?」
「あるよ」
「あるの?」
まさかの返事に驚いたような顔をした夕実に、浩太は笑って「そんな意外?」とケラケラいう。
夕実が記憶している中で、浩太が特別苦手な教科があったり、平均点を下回っていたりすることがなかったため、その返事は予想外だった。
ずっといたのに、知らなかった?そんな浩太らしくないのに?
「漢字テスト」
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