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「漢字?浩太って漢字別に苦手じゃ無かったよね?」
「字汚くて先生読めなかったって」
「……それ、いつの話」
「小学一年とかだな。それが最初で最後の0点」
「一年ね……確かに、読みづらかったけど……」
「あれ読めてたの夕実や親くらいだよ」
浩太は小学生一年の時は字が特別汚かったように思われる。そこらへんの男子とは比べ物にならないほど。それでも、夕実は浩太の言わんとすることは分かったので、最初は勘であてていたがだんだん読めるようになってきた。問題は、担任だった。
担任も浩太の成績に文句を言う必要が無いと思っていたのだが、どうしてもその字だけは解析できず、毎回本人や夕実を呼んで聞いていたほどだ。
小学二年生ほどからは浩太は書道を習い始め、着々と字が上手くなった。なんでもコツさえつかめれば、ぐんぐん伸びるタイプである浩太は今では夕実よりも字が上手いのではないかと思われるほどの実力だった。
「でも、そんな事知らなかったな」
「言ってないからなぁ。あん時は恥ずかしかったし」
「そうなんだ」
「夕実は百点だったじゃん?」
「そうだったっけ?」
「うん。でさ、そん時頑張んなくちゃって思って。今ならもう0点はとらないと思うよ」
「そうだね」
実際浩太は勉強が昔からよく出来ていた。それは本人が努力しているからだとは知っているが、自分だって別に努力を怠っているわけではないのにいつも浩太には一歩先を行かれてしまう。
悔しくないわけではないが、自分と浩太の頭の作りの違いにはだんだん気付かされていく。
一歩先を行っているとは表現したものの、本当は浩太は夕実が想像できないほど先を歩いていることくらいわかっている。
それでも、まだ浩太の影にすがっていたい。まだこうやって対等な立場にいると錯覚していたい。
なんて、本人に言ったら、責められてしまうから絶対に言わないけど。
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