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「洸太、彼女さん呼んどるよー」
クラスの誰か、誰にせよ間違いなく上の者、が知らせてくれる。俺は廊下へ出た。少しは暖かくなったようだった。校則をガン無視した、短いスカートから伸びる長くて白い足を俺の眼球が捉える。
「沙希どうした?」
「今日一緒カラオケ行こー!」
手でマイクをつくり歌マネをしている。
「ごめん、部活あるからっ」
本当は行きたいけれど、俺は敢えて言う。沙希はえー、と言って口を膨らませ始めた。
「彼女のためやと思って、ね?」
かわいいでしょ、と言わんばかりの、とびっきりの上目遣い。かわいい。確かに俺の彼女はかわいい。周りが見えなくなるくらいに。こういう瞬間にこそ、俺は〈上〉の人間になれてよかったと思う。
「しょーがねぇーなー」
としぶしぶ、でも裏では、ガッツポーズしながら答えた。俺の一番好きな顔が見れたから。
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