第1話 Prologue 目撃

4/7
前へ
/98ページ
次へ
 俺は入り口から一番遠い机のそばに行き、脚にもたれるようにして床にあぐらをかいた。窓に向かい合う形になるが、そこからは雑草が好き放題にはびこっている狭い中庭しか見ることはできない。教室を出たら、廊下側の窓からは校庭が見渡せるのだが、室内からはつまらない景色しか見えない。逆に言えば、誰からもこちらを見られることがないということで、その点もますます俺の気に入った。  この場所を俺だけが見つけられた、と思って、にんまりほくそえみながら弁当を開いた。  俺だけ、なんて、まったく何の根拠もなかったわけで。  まったりくつろいでいたら、不意に廊下をやってくる足音が響いてきたのだった。俺は動きを止め、念のため机の陰に体を入れて、仮に誰かが教室には行ってきても見えない位置におさまる。まさか来るはずないだろうな、とたかをくくっていたが、残念なことに間違いだった。  二人の生徒が地学教室に入ってきたようだった。いかにも仲むつまじそうに親しげな会話をかわしていて、俺は存在がばれないように息を潜めた。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加