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B 「何を撮っているの?」
突然、カメラのフレームを覗いていた私の背後から、誰かが話掛けてきた。
驚きながらも背後へ振り返ろうとしたが、既に彼は、私の真横に立っていて、私を見つめていた。
A 「あなたには関係ないことよ」
そう、咄嗟に答えた。
B 「ふーん。雪景色で埋まった田んぼを撮っていたって何も面白くないよ?むしろ、君の後ろにある梅の木の方が」
A 「だから、関係ないことよ。好きに撮らせて」
彼の言葉を遮って、私は言った。
B 「じゃあ、僕はそんな君の隣に居るだけにしよう」
A 「えぇ、どうぞお好きに」
私は、またカメラのフレームを覗き込み、被写体を撮り始める。田んぼは、雪景色と変わり、道との境目を無くす。奥の方で、鶴が求愛のダンスをしているが、それを被写体にする訳でもない。雪景色の田んぼの一部となる。
隣に居るという彼は、あれから一言も喋らず、私の隣に立っているのだろう。
A (......あれ?私の後ろって…梅の木があって、人が立てない筈...じゃ)
ふと、シャッターを切る手が、止まった。
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