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暴風一波編
どうして!!!どうして!!!どうして!!!わたしがみえないのよ!!!!!!!!!!
またか。
そんな考えが脳内に過ぎる。
頭上で爆音にも似た、繊細なものが崩れゆく音が聞こえた。余りの大きな音で鼓膜が破けてしまいそうだ。同時に自分がその場所に居た室内に爆風がどっと入り込んでくる。風圧に負けて倒れ込むように身体が後退する。空気の変動により呼吸が止まりそうで息が上手くできない。元より短い前髪や自分が着込んでいる制服、それだけではない、室内のもの全てが風によって舞い上がる。
瞳を守ろうとする本能が働いたのだろう、瞼が細まる。虹彩の向こう側にはキラキラと輝いた何かが風に乗り宙に浮いていた。窓硝子が割れた破片だ。陽の光に反射して部屋の中をプリズムで彩っていた。
右耳に装着している、翡翠が嵌め込まれたシルバーピアスから、小さな叫び声が微かに聞こえた。
“ 出ろ!!”
確かにその言葉は認識したが、身体まで衝撃に強ばってしまい順応することが出来無かった。咄嗟にその場にしゃがみこんで、頭部を守るように両腕を覆うようにした。腕の隙間から光が漏れ、その奥の景色が嫌に鮮やかに見えた。
「……っはぁはぁ…。」
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