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 翌日。予想通り雨が止み、快晴とはいかないまでも空は青かった。  天気はほぼ一日中、このまま安定しているだろうという予報がテレビから流れている。それを順調に聞き流し、猫は寝惚け眼で味噌汁をすすっていた。ちなみに、朝食は犬のお手製である。 「調査はどんくらい進んだ?」  きれいになった食器に丁重に手を合わせた猫は、ソファに寝転びながら犬に尋ねた。 「警察の情報提供があると、やっぱり早いね。蜻蛉は特定の巣があるわけじゃなくて、あちこちを転々としながら賞金首を狩ってるみたいだ。もう居場所は分かってる」 「そうなのか」  猫の反応は大して驚いた様子でもない。殺し屋のスタンスにもよるが、居どころや住処を調べるのは、実はそう難しくはないのだ。あくまで職業としている以上、客とのコンタクトが不可欠。蜻蛉のような賞金稼ぎならば、換金業者との繋がりも必要な場合がある。  だからこそ、裏稼業に関わる者の間にはルールがある。そのひとつが、『縄張りで無意味に事件を起こさない』こと。破れば営業妨害で粛清されても文句は言えないし、宣戦布告ととられても自業自得の決まりだ。 「今は、日時とか場所とか、どういう状況に持ち込むかを依頼人と相談中なんだ。決まったら、遂行だよ」  逆を言えば、ルールを弁えたうえで破りに行くのは戦闘開始の合図となる。 「りょーかい。やれやれ、居場所が分かるのに自分で動かない警察ってのも、面倒だねぇ」  ぼやいて、猫はふわりとあくびした。  つまりは、相談ごとがまとまるまで、まだ暇なのだ。 「あ、そうだ」  猫の退屈そうな雰囲気を感じ取ったのかそうでないのか、犬が思い出したように声をあげる。 「プリンターのインクをうっかり切らしちゃってさ。買ってきてくれない?」 「ええ~」  面倒臭いという感情がこれでもかと込められた渋い顔をするが、断る理由がないぶん状況は猫に不利だ。相棒の爽やかな笑みと共に差し出されたお使いの代金を、猫は敗北感に挫けそうになりながら受け取る以外になかった。
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