山上君のことを好きにならないなら

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 うちのクラスには変なきまりがあって、日直が当たっていたら、授業が始まる前に宿題を黒板に書きだしておかねばならない事になっている。  本当に変なきまりだけど、先生がそう決めてしまったから仕方がない。  おかげで、日直以外の人は宿題をしなくても、写せばいいじゃんと、みんな密かに思っているのだった。  マキノが宿題をしてくるなんて、まずありえない。  あの日は、自分が日直だなんて夢にも思わないで、「まあたまには学校にいってやろうかな」くらいの気持ちで来たんだろう。  ところが、一時間目が算数だったとは。  もちろん、宿題をしていないことを先生にとがめられて、しゅんとするようなマキノではない。  だけど、あくびをするマキノに山上君が近づいてきて、ノートを差し出してくれたという。  「ふーん。良かったじゃん」  アスファルトの冷たさが気に入って、寝そべってしまった猛犬太郎を眺めながら、わたしは言った。  ノート見せてくれるなんて、山上君、マキノが好きなんじゃないの。良かったじゃん、両想い。  ふっと、山上君の顔を思い浮かべた。  色白で、やせていて、さらさらとした髪の毛はいつもきちんとしている。  小学校の紺色の制服にはアイロンがかけられているし、ランドセルも大事に使われているみたいだ。     
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