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血色の悪い白い顔で、ひょろっとした体で、ちょっと鼻にかかった甘い声なのに、ぶっきらぼうなマキノ。
どこか、甘え上手なマキノ。
(本当は、わたしの片思いなのかもしれないなー)
マキノが残り物じゃなくて、ただ単にわたしがマキノを好きだから。
わたしがマキノを面白い、一緒にいて楽だと思っている気持ちの半分でも、マキノがわたしに対して抱いてくれたらと思う。
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その日は珍しく雨だった。
マキノは例によって午前中で姿を消してしまい、給食の時間には既にいなくなっていた。
わたしは当番だったから、掃除を終えて日誌を書いて提出して、みんなより遅くに学校を後にした。玄関はがらんとして、夕日の赤が照っている。
降りしきっていた雨は少し引いていて、ぼしょぼしょと湿っぽい音が響いていた。
涼しい風が開け放された入り口から吹き込んでいる。
外履きにはきかえた時点で、あれっとわたしは思った。なんとしたことか、傘を忘れて来たのだった。天気予報はチェックしていたはずなのに、ここのところ晴天続きで油断したのだ。
軒下まで出てみると、やっぱり外は雨で、ぼしょぼしょぼしょぼしょ校庭に水たまりができていた。
「あー……」
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