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女子たちはみんな帰っているし、傘に入れてくれそうな子はいない。濡れて帰るか、制服を濡らしたらママが怒るなとため息が出た。
その時、後ろから声をかけられて、文字通りわたしは飛び上がった。
「やっぱり、キミサキさん、傘忘れてたんでしょ」
物静かで、ちょっと低い声だ。
紺のブレザーと長ズボン姿の山上君が、黒い傘を持って、こっちを見ている。
淡々とした目で、およそ、同じ年あいの男の子ならとても言えなさそうなことを、彼は言った。
「だから待っていた。一緒に帰ろう」
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