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お座りとお手くらいしか芸を覚えない駄犬でも、わたしの気持ちは通じたらしく、未だに猛犬太郎は人を噛まない。それと、ママだけにはやけに礼儀正しいのだった。
(わたしは、残り物を見捨てることができない)
つくづく思う。
汚くて臭くて、たった一匹だけ雪の中に取り残されてしまった犬とか。
学校に来なかったり、来ても好きな時に帰ったり、なにか気分を損ねたら、蹴ったりものを投げたりする、変人の女の子とか。
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マキノには、友達がいない。知っている限りでは。マキノのうちもシングルマザーだけど、うちのママとはずいぶん違う。
アパートの中はがらんとしていて、ゴミ箱の中にはコンビニの弁当とか、お菓子の空き袋が詰まっている。
マキノのママは、ごはんを作らない。
そして、うちにもなかなか帰ってこない。
いつも同じ服を着ていたマキノだけど、中学年くらいから自分で洗濯機を回すことを覚えて、アパートのベランダには時々、パンツやTシャツがひらひらそよいでいる。
おこづかいは適当にもらえるので、そのお金で必要なものを買っている。
マキノは学校に来ても無口で、きつい目をしている。
小さい時は虐められていたのだけど、高学年になったら、怖がられるようになった。
「あの子には近づかないで」
と、おうちから言われているとのことで、みんなマキノとは極力関わらないようにしている。
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