残りもの

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 お座りとお手くらいしか芸を覚えない駄犬でも、わたしの気持ちは通じたらしく、未だに猛犬太郎は人を噛まない。それと、ママだけにはやけに礼儀正しいのだった。  (わたしは、残り物を見捨てることができない)  つくづく思う。  汚くて臭くて、たった一匹だけ雪の中に取り残されてしまった犬とか。  学校に来なかったり、来ても好きな時に帰ったり、なにか気分を損ねたら、蹴ったりものを投げたりする、変人の女の子とか。 **  マキノには、友達がいない。知っている限りでは。マキノのうちもシングルマザーだけど、うちのママとはずいぶん違う。  アパートの中はがらんとしていて、ゴミ箱の中にはコンビニの弁当とか、お菓子の空き袋が詰まっている。  マキノのママは、ごはんを作らない。  そして、うちにもなかなか帰ってこない。  いつも同じ服を着ていたマキノだけど、中学年くらいから自分で洗濯機を回すことを覚えて、アパートのベランダには時々、パンツやTシャツがひらひらそよいでいる。  おこづかいは適当にもらえるので、そのお金で必要なものを買っている。  マキノは学校に来ても無口で、きつい目をしている。  小さい時は虐められていたのだけど、高学年になったら、怖がられるようになった。  「あの子には近づかないで」  と、おうちから言われているとのことで、みんなマキノとは極力関わらないようにしている。     
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