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マキノ
そんなことがあってから、マキノは普通に接してくれるようになった。
学校には、今のところ毎日来ている。最も、昼前にはどこかに消えてしまうのだけど。
山上君がわたしのことを好きだというマキノの言葉が、どこまで本当だか分からない。
だから極力気にしないようにしていた。
隣の席の秀才君は、相変わらず物静かで、毎日、給食を鳥のように食べている。
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早朝、わたしは猛犬太郎を散歩するついでに、マキノのアパートの前まで行く。
マキノも分かっていて、時間を見て二階の部屋から顔を出し、犬の姿を見るとにいっと歯を見せるのだった。
マキノはサンダル履きで外に飛び出してきて、あいさつ代わりに犬の体を撫でまわす。
「ごはん食べた」
「食べない」
短いやり取り。
わたしは、自分で作ったサンドイッチを手渡す。
マキノは嬉しそうに広告紙をむいて、耳のついたままのサンドを食べる。
給食すら真面目に食べないマキノが、豪快にパンをほおばる。その顔が、すごくイケてると思う。
(売れないロックバンドのシンガーが、ごはんにありついた時みたい)
「キミちゃん料理うまいね」
「そんなことない」
チーズとレタスをはさんだだけ。
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