相合傘の中

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相合傘の中

 ぼしょぼしょ降りの雨は、おさまりかけていたのに、また急に勢いを強くした。  濃い夕焼けが漂っていた校庭は、いきなり黒い雲がもさもさと寄ってきたせいで、陰気に薄暗く陰ってしまった。  ざーざー本降りの中、ずぶ濡れで帰るのは、とても嫌だった。  (マキノに知られなければいい)  と、わたしは一瞬で気持ちに蓋をして、差し出された手を素直に受け取ることにしたのだった。  クラスの男子が見たら、絶対に冷やかすだろう。  なにしろ、相合傘だからな。  背の高い山上君は、ゆっくりと歩いてくれる。明らかに速度をわたしに合わせてくれている。  クラスでもチビのほうのわたしは、ちょこまかと一生懸命に歩かねばならないのだが、山上君は淡々と、慌てたら転ぶよ、と言っただけだった。 **  細い道から大きい道に出る白線でいったん止まる。  小さい信号機があって、ちょうど赤だった。なかなか青にならない信号なんだ。  目の前を、軽トラが水しぶきをあげながら走っていった。他には誰もいない。  「キミサキさんの傘はオレンジ色で、縁がちょっと破れている」  ぼそっと山上君は言った。こっちを見ずに喋っている。     
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