ペットロス男子、山上君

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ペットロス男子、山上君

 ぼうっとしていた。  夕方、あんなに降っていた雨はもう上がっていて、外は晴れている。星も出ているかもしれない。  今日、ママは夜勤だし、作り置きのごはんを食べてしまって、わたしは暇だった。  いつもなら猛犬太郎を連れてマキノに会いにいくところだけれど、そんな気になれない。  一応勉強部屋がうちにはあって、そこがわたしの部屋になっている。  二階の洋間だ。  リサイクルで買ったベッドと、勉強机とタンスがあって、去年のクリスマスに買ってもらったラジカセが曲を流していた。  わたしは一応は宿題をする。下らないと思いつつも、ちゃんとする。  テストの点が悪いのはしょうがなくて、ママもそのへんは「あたしの子だから」と大目に見てくれる。だけど、宿題をサボることについては厳しい。  仕事でくたびれ果てているはずのママだけど、連絡帳だけは毎日きっちり目を通し、時々きらーんと目が光るのだった。  「あんたっ、ちょっとそこに座んなさいっ」  宿題をやらなかった日。  忘れ物をした日。  そういう時は、ママは怖い。  つまり、自分がやれば済むことを怠ったら、ママは怒るのだ。     
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