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夢中で空を飛びながら、なぜか昔のことを思い出していた。
いつも、何か新しいことを始めるとき
それはとてつもなく無謀なことのように思えた。
自分なんか自分なんか…と思い過ぎて、最早スタートラインが下降線からのスタートだったのかもしれない。
幼馴染の可憐は、
ちっちゃな頃から魔法の昇級試験なんかも、
こまめに受けていて良く失敗が怖くないなーと思っていた。
それを伝えると可憐は
「だって、ダメで元々ならやってダメだった方が良いじゃん!自分の実力試せるって面白いよっ!」
と答えた。
超前向き、スーパーポジティブ…
いつもクラスの後ろの方に隠れていた私に、
可憐はとても眩しかった。
私なんてダメ。ずっと自分に呪いをかけてた。
それでも。
私が一般の学校じゃなくて、魔法養成所に来たのは…
透悧くんの影響だった。
クラスの有名人透悧くんが、
誰よりも長い指をサッと振り翳すと、
誰よりも早く物が宙に浮き、
そして物が瞬間移動するのだった。
初めて彼を見た時、すごい!魔法みたいと思った。
イヤ魔法なんだけど、何というか彼の技は神がかっていた。
そんな彼は有名人だったし取り巻きも多かった。
私が彼のことをちゃんと知ったのは、
それから数ヶ月後…
彼が誰よりも自主練していることを知ったときのことだった。
たまたま通り掛かった中等部のレッスンルームに向かう彼を見かけた。
彼でも練習するんだと興味本位で途中まで着いていったら、彼が手袋をしていないことに気づいた。
彼のトレードマークだった黒い手袋は実は、
練習で出来た火傷や傷痕でぐちゃぐちゃになった手を隠すものだったらしい。
手のひら全体が皮が剥け、
火傷した状態になっていて痛々しかった。
あんなすごい技を繰り広げる人が、
こんなぐちゃぐちゃの手になるまで練習してるなんて…
衝撃だった。
そこから、誰よりも落ちこぼれだけど
誰よりも練習するようになった。
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