第1章 2550年

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個人レッスンルームに再びI.D.カードを通すと ガチャリと扉が開く。 今日は浮力を使った練習をしようと試みていた。 魔法書の第2章・浮力の使い方のページを開く。 先ずは精神統一。 意識が散漫になっていると絶対物なんか浮かすことが出来ない。 スッと目を閉じ集中する。 今だ! 目を開け先ずは小さな15g?ほどのボールを浮かせることから始めてみた。 集中して手を伸ばしボールの方向に気を当てる。 手が熱くなり、力が暴発しそうになるけど 何とか堪える。 ヴ…一瞬ボールが5センチくらい浮き上がったが、 直ぐにストンと元の位置へと降りてしまった。 悔しい… 正直私は決して優等生ではなく、寧ろ成績も下の落ちこぼれ組だった。 皆んな自分の個性を活かして、イキイキしてるのに 魔女と人間の血が混じった私は、 中々自分のチカラを解放できずにいた。 練習だって今日が、初めてじゃない。 入学してから早10ヶ月、皆んながとっくに終えている第2章の項目をこうやって毎日黙々と続けているのだった。 30分間練習をして、ようやく7センチ浮かすことが出来た頃、学校のチャイムが鳴り 慌てて片付けて教室へと戻った。 全速力で走って ハァハァと息を切らしながら教室に戻ってきたのは、ちょうど先生が教室に入ってきたのと同じタイミングだった。 少しバツの悪い思いをしながら、恐る恐る教室に入る。 先生には一瞬見られたが、自主練していることを知られているせいか、特に何も言われずギリギリ間に合った感じだった。 吹き出る汗を手で仰いでいると、 後ろの席からトントンと背中を叩かれた。 「愛梨おはよ。今日も自主練してたの?」 コソッと後ろから小声で聞かれる。 三橋可憐(みつはしかれん) その名前の通り華のある幼馴染だった。 ふわふわのウェーブがかった肩まで伸びた栗色の髪の毛と 昔馴染みでも惚れ惚れするくらい、 肌の色が白くきめ細やかな陶器みたいで、 茶色がかった瞳が愛らしく小動物を思わせるようなそんな子だった。 身長は148センチと、小柄なのに馬力と才能に溢れていていつも実技試験は上位5位までに入っていた。 「うん…まぁね」 まさか第2章をまだクリアしてないなんて、誰に言えるだろう。 複雑な気持ちのまま、授業へと向かった。
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