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最後の季節
A「あ、来てたんだ……」
そう言って構えたカメラを胸元に下ろし、蕾が大きくなった枝葉をくぐって歩いてくる幼なじみを俺は呆れ顔で見つめる。
バツが悪そうに目を反らすのは、つい数日前まで風邪で寝込んでいたのに家族に内緒で家を抜け出しこんな所に来たからだ。
B「お前を探しに来たんだよ! どうせここだろうと思ってな。全く、まだ息も白いうちに何やってんだか……」
A「今日は朝から良い天気でしょ? だから全部見渡せるかなって思ったの、ほら大正解でしょ?」
小高い里山から下の景色を指差して楽しそうに笑うと、見慣れた代わり映えのないそれらをレンズ越しに写して一枚撮るごとに満足そうな白い息を口元から零す。
B「だからって病み上がりにコート一枚だけ羽織ってこんなとこ登るやつがあるか! ほらこれ!」
A「わぷっ!? ああ……私のマフラー持ってきてくれたんだ」
B「おばさんから預かったんだよ。体弱いくせにそんな格好でいつもウロウロしてっから!」
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