第1話:街角を曲がるとそこは異世界だったの

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第1話:街角を曲がるとそこは異世界だったの

「なによこれええっ!?」  街角を曲がると、そこは異世界だった。  うん。間違いなくそう言えると思う。  大事なことだから、もう一度言うね。  街角を曲がると、そこは異世界だったの。  ええと、順を追って説明するね。  おばあちゃんが体調を崩したこともあって心配だから、お父さんとお母さんは相談して、田舎のおじいちゃんの家に引越すことにした。  もちろん、おジイちゃんも優しいし、お婆ちゃんも心配だから、あたし――沙耶――も引越に反対する気は無かった。夏と冬に何度も行っている田舎のおじいちゃんの家だしね。  中学に上がってからだと、色々と進路とかの問題が起きたかもしれないけど、小学校六年のうちに引越すなら、少しは楽だろうというのが両親の心遣いだった。まぁ、友だち関係が面倒臭いけど、お料理もロクにできないおじいちゃんにおばあちゃんの看病をさせるわけにもいかないしね。ここは、あたしが折れる所でしょ。  で、住み慣れた都会のマンション生活を捨てて、田舎のスローライフを満喫しようと、今日、引越してきたってわけ。荷物は引越業者さんが家に入れてくれるけど、荷ほどきは自分でやらないといけないから、もう大変。  腕が痛くなるわ、腰が痛くなるわ……  12歳の身空でなにいってんのと言われるかもしれないけど、歳はとりたくないもんだわ。  あと2歳若かったら、こーんな段ボール箱とか、ひょいひょいって片づけられたと思うの。  まぁ、まだ若いから、片づけも自分の部屋のものだけでいいんだけどさ。お母さんときたら、自分の部屋の荷物にキッチンの荷物、それからそれからと色々とあるみたい。  こういう時、男はアテにならないって言うけど、ホントそう思う。お父さんはただ右往左往しているだけで邪魔者扱いされて、結局、縁側でおじいちゃんと将棋を打ちはじめちゃった。
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