第1話:街角を曲がるとそこは異世界だったの

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 あたしはというと、組み立て直した本棚に持ってきた本を入れ、クローゼットに洋服を掛けていく。  あたしにあてがわれた部屋は、畳敷きの六畳間だけど、東京の六畳間よりもなんだか広い感じがする。おじいちゃんの家が、古民家みたいな家だからかな?  おじいちゃんの家は、曲屋っていうタイプの家で、築120年くらいって聞いてる。まぁ、とんでもなく古い家よね。当然、窓とかはちゃんとガラスが入っているよ? さすがに、障子に雨戸だけなんて生活じゃないからね。  そんなことをやっている間にお昼時になっちゃった。  さすがにお母さんもお昼ご飯の準備をするヒマもないから、あたしがコンビニに行って、おにぎりとかを買ってくることになったの。昔の東京の家なら、玄関を出て5分でコンビニについたけど、ここじゃちょっと行った先にある商店街まで行かないとコンビニもない。  お父さんはおじいちゃんと将棋に夢中だから、一緒についてきてと言ってもムダ。  仕方ないから、あたしは一人でお使いに行くことにした。  商店街にあるコンビニまで行って、人数分のおにぎりを買ってくるだけの簡単なミッション。 「おかかが四個、シャケが三個、ウメボシが二個、お赤飯が一個。あとは、油揚げが一枚か……」  ミッションには、さらに、おばあちゃんの要望で味噌汁の具にする油揚げの購入も追加されていた。お豆腐屋さんの場所も、前に帰省の時におばあちゃんと一緒に行っているから、もう熟知済。まぁ、あたしには本当に簡単なミッションだった。  一緒にお菓子も買ってきなさいと、おばあちゃんに渡されたお小遣もあったせいで、ちょっとだけあたしの足も軽かった。べ、別にお小遣に浮かれていたわけじゃないからね!  春先の引越ならまだ雪も残っていたかもしれないけど、今は八月のお盆過ぎ。田んぼは一面に稲が並び、さやさやと夏風に揺れていた。東京の暑さに比べたら、こっちの暑さは過ごしやすいかな……。まぁ、日陰がないからジリジリ焼かれる感触は、こっちの方が多い気がするけどね。
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