番外編Ⅵ

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その開栓する一ノ瀬の余裕な振る舞いに 失敗でもして慌てふためく姿になれば面白いのに。 などと良からぬ考えをしていた ――しかし、 そんな咲の願いも叶わず 赤ワインをグラスに注ぎ、色をじっくりと眺め 「鮮やかなルビー色、タンニンやや少なめ…かな、」 一度香りを嗅いだ後、くるくると空気に触れさせ、また嗅ぐ 写真を撮るのを止めて一ノ瀬の真剣な表情をつい見つめていた 飲んだことのあるワインの記憶を辿っているのか、目を閉じ、落ち着いて言葉に出した 「なめし革の香り―、凝縮された果実 ピノ・ノアール…」 ―はッ!?「あ゛っ!あぁっっ!?」 いきなり咲がおかしな奇声をあげた 「やかましいな。今度は何だ、」 菅は反応したが、一ノ瀬は集中しているのか、無反応でワインを口につけている 思い出したっ!あの……顔 「ワインセラーの、、」 咲は静かに呟いた後、数枚写真に収めると 元の椅子に座ると同時にPC画面に向かい カタカタとキーボードを叩き始めた
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