番外編Ⅵ

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コポコポとヤカンの中で沸騰し始めた音がしてきたところで 「巳耶、」と、一ノ瀬が呼ぶ 「何?」 「珈琲、淹れてくれる?」  新しくペーパーフィルターを折りながら、 さっきまでと違う柔らかい口調で巳耶に話しかける 急にそういう… 「自分で淹れればいーじゃないの、」 戸惑う巳耶に変わり、絢香が言った 「巳耶が淹れてくれたの飲みたいの、」 ―そういう嬉しくなる事を抜け抜けと… しかも何事も無かったように笑顔で、本当に この男はっ―… 「誰でもいいが、珈琲終わってるぞ、 絢香が買ってくるまで、仕込み手伝え。」 尾上がそう伝えると 早く言ってよ と、文句を言いながら 一ノ瀬は尾上と一緒に調理場へ向かっていった 「じゃー、買い物行くかー、 よくわからない男ね、 巳耶ちゃんも行く?――巳耶ちゃん?」
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