番外編Ⅲ 倍返しを下さい

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ベランダのタバコの小さな灯りが消え 一ノ瀬が部屋に入ってきた いつもなら、好きな煙草の香りも 嫌な気分になってしまう 服を全部着て帰り支度をしている 「じゃあね、おやすみ」 やっぱり帰るのか…… 「おやすみ…。」 家に帰るのかな 『彼女のとこ行くの?』なんて 冗談交じりに聞いてみたかった 凄い嫌味な言い方してしまいそうで 何も話せない 『泊まっていって』と言ってみたいのに 束縛と思われそう…… 「気をつけてね」 それだけ言った 玄関が閉まる音 車のエンジンをかける音 車が移動していく音― 一ノ瀬の姿、声、関わる音が全て無くなる さみしい……
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