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ベランダのタバコの小さな灯りが消え
一ノ瀬が部屋に入ってきた
いつもなら、好きな煙草の香りも
嫌な気分になってしまう
服を全部着て帰り支度をしている
「じゃあね、おやすみ」
やっぱり帰るのか……
「おやすみ…。」
家に帰るのかな
『彼女のとこ行くの?』なんて
冗談交じりに聞いてみたかった
凄い嫌味な言い方してしまいそうで
何も話せない
『泊まっていって』と言ってみたいのに
束縛と思われそう……
「気をつけてね」
それだけ言った
玄関が閉まる音
車のエンジンをかける音
車が移動していく音―
一ノ瀬の姿、声、関わる音が全て無くなる
さみしい……
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