そして…空を見上げた…

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星座になんて…特に興味は無かったんだ… ただ…君が居るから天文部に入ったんだ… 望遠鏡なんて…別に得意じゃ無かったんだ… ただ…君が「金星が見たい」って言うから必死に調整の仕方を覚えたんだ… 星なんか…ほとんど見て無かったんだ… ただ…君がはしゃぐ横顔しか観ていなかったんだ… 君が眩しがったスーパームーンより… 君の笑顔はよっぽど眩しかった… 本当は全然別方向なのに… 通り道の振りして君を家まで送った… 雨や曇りの夜は… 来年の流星群を約束した… そんな君が… なぜあの日… 自宅アパートの屋上から空へ飛び立ってしまったのだろう… あの日…天文部の部員が全員呼び出されて… 部活でイジメが無かったか、変わった様子は無かったか、顧問から切々と問い質された… 僕はショックだった… こんなにも僕は…君の事を知らなかったのか… こんなにも僕は…君の異変に気付いていなかったのかと… 校内ではいろんな噂が立って… 大学生の彼氏に棄てられただの… 妊娠中絶しただの… 誰だかの彼氏に手を出してイジメられただの… 聞きたくも無いはずなのに聴き耳を立ててしまっている自分に虫唾が走る思いがした… 僕は悔やんでも悔やみきれないんだ… あの日…空を見上げて涙ぐんでいた君を… 空を見上げて…涙ぐんでいた様に見えた君を… どうして僕は…気付かないふりをしてしまったんだろう… 君の頬を伝う涙を…気付かない方が優しさだと… どうして素通りしてしまったんだろう… 学校で…君のお父さんとすれ違った… 僕は…全く認識されていない… そういえば…お母さんは星になったって言ってたっけ… 君も…星になったのかなぁ… 君は…好きだった金星になるのかなぁ… 新しい星になるのかなぁ… 君の方がよっぼどヴィーナスだって… 言う勇気は無かったけどね… 誕生日に渡したかったアクエリアスの星座絵のジグソーパズルが…行方を失っているよ… 今日は久々に快晴の夜だ… 天体望遠鏡を慎重に調整して… そして…満天の星の…空を見上げた… 僕は今夜…君の星を見つけられるだろうか……… ーーー finーーー
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