ベランダの男

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 アパートのベランダが丸ごと落下したのだ。  ただ真っ直ぐ下に向かって落ちたので、通りかかった人もおらず、大きな被害はなかったが、もしあの時前進していたら、俺は確実に巻き込まれていただろう。  ちなみに、程なくやって来た警察がその時のことを聞きたいと言うのであれこれ話したが、落ちたベランダに人はいなかった。というか、そもそもその部屋は空き室で、人は誰も住んでいなかったとその時聞いた。  近所の浮浪者がアパートに不法侵入し、無断で部屋を使っていたのかもしれないと、警察は俺から聞いた男の特徴を手掛かりに付近の操作をするらしい。  でも多分あの男は見つからないだろう。  きっとあいつは生きてる人間じゃない。今になって何故か強くそう思うんだ。  どんな理由があってあのアパートのベランダにいたのかは知らないけれど、道連れを探して毎日通りを眺めていたのだろう。そして俺に白羽の矢を立てたが失敗し、姿を消した。そんなところだろう。  どうして俺が選ばれたのかは判らない。けれどあの男の思惑は叶わなかった。  見知らぬ男の道連れで死ぬなんてごめん被る。ホント、あの場で前進せずに足踏みした自分を褒めるよ。 ベランダの男…完
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