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「おれ……おばあちゃんに会いたいもん。今日会えるって言ったから、おれ、しゃぼん玉持ってきたんやもん。おばあちゃん、おれとしゃぼん玉で遊ぶの好きやって言ってたもん。だからおれ……おれ……」
たどたどしい言葉は、けれども俺の胸に深く突き刺さった。
そういえば、俺がタケルの遊びに付き合わなくなった代わりに、祖母が遊んでやってたんだっけ。
ふと、ある日の学校帰りの光景を思い出す。まだ元気だった祖母が、家の前でタケルとしゃぼん玉を吹きあっていた。「何がそんなに楽しいんだか」と言ったら、「タカシちゃんは大人になっちゃったんやねぇ」と祖母に笑われたんだっけ。
そうかタケルは、ずっと祖母としゃぼん玉がしたかったんだ。
「行け! 行け!」
タケルは今度は、空に向かって声をあげた。
「行け! われるな! 行け!」
空に漂うしゃぼん玉一つ一つに向けて叫んでいる。しんと静まり返った空間に、タケルの必死な声だけが響いた。
「タケル、お前……」
「おばあちゃん、お空にいるんやろ? おれ、お空までしゃぼん玉とどけたいんや。お空の神さま、お願いやからおばあちゃんにしゃぼん玉とどけてや!」
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