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「なんで……? ぜんぶ、ぜんぶ、われたよ……? ぜんぶ、ぜんぶ、消えちゃったよ……?」
「ちがう」
思ったより大きい声が出た。タケルが不思議そうに俺を覗き込む。体から全ての水分が出尽くしたかのように、その瞳にもはや涙はなかった。
「ちがうん……?」
「ちがうよ、タケル。しゃぼん玉は消えたんじゃない。しゃぼん玉は──」
俺はタケルの手をそっと握った。温かい子供の体温が、俺の中の何かを溶かしていくようだった。俺たちは揃って空を見上げた。空の、もっと上の方にいる、祖母を見上げた。
俺の頬を、生暖かいものが伝った。
「──空が吸い込んだんだよ」
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