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「あらぁ、おっきなったねぇ」
俺とタケルの目の前にたまたま座ったオバサンが、目を細めて俺たちを交互に見た。
「お兄ちゃんは中学生になったんやねぇ。ボクは何年生になったん?」
黒い服のボタンがはち切れそうなほど太ったオバサンは、今度はタケルの方にずいっと身を乗り出した。その迫力に、弟がちゃんと受け答えできるか心配になり、チラリと横目で様子を伺う。
「おれ、一年生になってん」
しかしそんな心配は必要なかったらしい。タケルは胸を張ってハキハキと答えた。その様子にオバサン以外の大人も、皆一斉に「わっ」と声をあげた。
「お利口さんやねぇ。ほら、お菓子食べな」
「ん!」
タケルは、母からの『あまり食べるな』の忠告をすっかり忘れて、机の上のお菓子の包み紙を開けた。
「こら、タケル。お母さん言ってたやろ。後でご飯食べれんくなるぞ」
「でもオバサン食べていいって」
手にしたクッキーを口に運ぶ寸前で止められたタケルは、しゅん、と背中を丸めた。
「まぁまぁ、一個ぐらい平気やよ。ほら、お兄ちゃんも食べな」
オバサンにタケルと同じクッキーを手渡され、俺たちは目を合わせた。タケルがニカッと笑うので、『これはもう共犯だ』と腹を括ってクッキーを頬張った。
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