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係のオジサンが骨を整えた。サクサクサク。軽やかな音がこの重苦しい空気と相反して、クラリと目眩がした。最後に頭部の骨を入れ、蓋がされる。
こんなに、こんなに小さな壷に、祖母が入ってしまった。
『しゃんとしい』が口癖の祖母。死ぬまで自分の足で歩くと、毎日散歩を欠かさなかった祖母。早くに死んだ祖父の分まで、俺たちを可愛がってくれた祖母。
祖母との思い出が浮かんでは消える。けれども、思い出の中の祖母と目の前の壷が関係あるとは思えず、涙は一滴も出なかった。
あまりにも現実味がないのだ。この空間も、黒い服の大人たちに囲まれた自分も、何もかも。
本当はこれは夢で、目が覚めたらまたいつものように、祖母が笑顔で「おかえり」と言ってくれる気がする。
箱の中にしまわれ白い布が被さった骨壷は、本当にもう何なのかわからなくなって、余計に俺にそう思わせた。
「にいちゃん、だいじょうぶ?」
いつの間にかオジサンにおろされたタケルが、俺の学ランの裾を引っ張っていた。
「ん、なんで?」
「にいちゃん、痛そうやったから。どっか痛いん?」
「痛ないよ。なんでもない。あ、ほら、行くぞ」
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