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大人たちに続いて部屋を出る。そのまま係の人と話をする父を残し、俺たちは外に出た。
冷たい風が頬に当たる。ふと上を見ると、青く澄んだ空が、どこまでも高く広がっていた。
「なぁ、もう帰るん?」
タケルが側に転がる石ころを拾いながら、訊ねた。
「まだや。お母さん言っとったやろ? 今からあっち戻ってみんなでご飯食べるんや」
「ええー、いやや!」
タケルはそう言うなり立ち上がると、手に持った石を乱暴に投げた。その一つが俺の足に当たる。
「コラ! 行儀悪い! もうちょっとやから我慢しい!」
ペチンと頭を叩くと、タケルは下唇を突き出し、俺を睨んだ。
「だっておれ、お腹へってないもん……」
消え入りそうなその声を、俺は聞き逃さなかった。
「だから言ったやろ! お昼食べれんくなるって。俺は知らんよ」
突き放すようにそう言うと、タケルは俺を睨むのをやめ、下を向いた。しばらくそのまま動かなかったが、次第に肩が震えだし、とうとう鼻水をすする音まで聞こえてきた。
このままだと怒られるのは俺だ。仕方ない、としゃがみ込んだその時、目からポロポロ涙をこぼすタケルが、ぽつりと言った。
「おばあちゃんに会いたい……」
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