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『おばあちゃんに会いたい』と、タケルはハッキリそう言ったのだ。困った。こういう時になんて言えばいいのかわからなかった。
俺は大人たちの言葉を思い出し、こう言った。
「おばあちゃんはお空に行ったんや」
「お空にどうやって行くん? おれも行きたい」
「タケルは行けんよ」
「なんで?」
「なんでって──」
言葉に詰まる。ため息混じりに頭を掻くと、何か子供を黙らせるいい案はないかと考えを巡らせた。けれども特に何も思いつかず、相手にするのもやや面倒になってきた。
「とにかく、会えんもんは会えんのや。我儘言うなや」
意図せず怒った言い方になり、それを察したタケルがビクリと体を震わす。
「なんで……」
次から次へとこぼれ落ちる涙を、タケルは拭おうとはしなかった。その代わり、制服のポケットをぎゅう、と握る。そして大きく息を吸い込んだかと思うと、俺の目を真っ直ぐに見つめた。
「おれ、おばあちゃんに会いたいもん! なんでにいちゃん、そんなひどいこと言うん? なんで! なんで……!」
タケルが真っ赤な顔をして叫んだ。周りで話していた親族も、一斉にこちらを振り返る。
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