Ⅰ ~美帆子side~

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** 次の日、目が覚めたのは朝の6時だった。 寝返りを打つ。 視界に正成のベッドが入る。 もちろん誰も寝ておらず シーツから何から全て整ったまま。 寝息も何も聞こえない。 こういう朝を迎えるたび 今ごろあの人は誰の隣にいるのだろうと 嫌でもぼんやり浮かんでしまう。 そんな考えても仕方ない事をもう3年もやっている。 ひとつため息をついて ゆっくりと起き上がり 寝室からリビングへ移動した。 大きい窓のブラインドが下がっていても 天窓から朝日が差し込むので 晴れていれば十分リビングは明るい。 その足で洗面所へ行き テキパキ自分の身支度を整える。 着ていく服は少し悩んだが 最近一目惚れで購入したがまだ一度も着ていなかった秋物のワンピースにした。 品のある丸襟ときゅっとしたウエストラインが気に入った。 白が基調で一見夏っぽく見えるけど 重みのある艶やかな生地の素材が秋を思わせる。 あからさまなデザインより 素材などの見えにくい細やかな部分で季節を演じる方が私の好みだった。
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