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「え~ネイル取っちゃうのぉ?
あ、なら新しい色の付けてあげようか」
紗理奈が私の手を名残惜しそうに揉む。
クリスマスが過ぎたネイルサロンはそこまで混んでいなかった。
「付けたいけど遠慮しとく。いつものメンテナンスお願い」
はぁいと紗理奈は口を尖らせて返事する。
「まぁ前回が珍しかったって事よね~。
このネイル、美帆子に似合ってたなあ」
そう呟きながら、リムーバーで丁寧に私のネイルを取っていく。
「もしかして正成さんにまた言われちゃった感じ?」
私は笑って首を横に振った。
出張から戻った正成は文句を言うどころかネイルに気付きもしなかったのだ。
だけどショウくんは変化にちゃんと気付き、さらに褒めてくれた。
凄く嬉しかった。
彼からの 似合っている のひと言で、気付きもされなかった事などどうでも良くなった。
認めてくれる男性は一人いるだけで十分だった。
「言われてないよ。ただ、もうすぐお正月でしょう?正成のご実家にも顔を出さないといけないから」
すると紗理奈は、あ~やめて~とあからさまに嫌がる顔をする。
「私も旦那の実家に行くんだった~。あぁ気が重い」
リムーバーそっちのけで首をガックリと落とす姿に笑ってしまう。
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