Ⅷ 〜美帆子side〜

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体は正直だと改めて思った。 今日は朝から調子が良く、目覚めも良かった。 正成を送り出した後もパタパタと身軽に家の事をこなせた。 何日も前からこれにしようと決めたワンピースに着替え、鏡の前に立つ。 それだけで胸が高鳴った。 久しぶりに感じるこの高まりと緊張。 罪悪感で押しつぶさそうなのに、それを越えてくる "会いたい" という気持ち。 ショウくんと会わなくなってすっかり忘れていると思っていたのだが、体は覚えていたようだ。 でもこれを感じれるのも今日で最後なのだ。 今まで振り返ると、考えられない事をしていたんだなと思う。 色々な思いを噛み締めて、最後の身支度をした。 ショウくんは私が髪をまとめるとすごく綺麗だと褒めてくれた。 だから今日はふわりと髪をまとめる。 落ち着いた色のバレッタを付け、空いた首元にシンプルなネックレスを光らせる。 このネックレスはショウくんと初めて会った時に一度だけ付けた事のあるものだ。 今日はいつもより綺麗な姿で会いたかった。 ショウくんの中に、最後は特に綺麗だったと記憶して欲しいとさえ思った。 でも気合を入れすぎるのではなく、程よく力を緩める。 度合いが難しかった。 だがその難しささえ、今の私には愛しく思えた。
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