Ⅰ ~美帆子side~

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再びタクシーを使ってカフェに着いた時間は 約束の10分前だった。 もう少し早めに到着する予定だったが 逆にこれくらいのが良かったのかもしれないと カフェ店員に通された席に座ってから思った。 きっとあまりにも早く着いてしまえば 彼が来るまでの間 落ち着いて居られないだろう。 あえてここは普通のカフェにしておいた。 正成のような男性と一緒になったならまず 足を運ばないような本当にごく普通のカフェ。 何せ相手は15歳も離れた若い青年だ。 だから迷った挙句ここを選んだのだ。 待ち合わせをしているので と伝えた為 店員がこちらへ来ることは無かった。 視線のやり場に困った。 私の座っている位置から左手に カフェの入り口が見える。 そっちに視線がいってしまうが 彼が入ってきてすぐに目が合ってしまうのは なんだか恥ずかしいものがある。 かと言って、下を向いているのも 内気なイメージがついてしまってなんだか嫌。 結局、美帆子は入り口の反対である右の方に顔を向け 外を見る振りをする事にした。 しばらくすると 自動ドアの音がし、いらっしゃいませの声がした。 ちらりと腕時計を確認するとぴったり10時。 私は小さく息を飲んだ。 男性の靴特有の足音が近づいてくるのが分かる。 あぁ本当 自分はここで何をしているのかと 一瞬 頭にぽっと浮かんだと同時に 足音が美帆子の目の前で止まった。 「美帆子さんですよね?」
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