Ⅰ ~美帆子side~

16/27
前へ
/147ページ
次へ
運ばれてきたコーヒーが細く息をする中 私が あの と口を開いた。 「約束場所がこういう所って変?」 コーヒーを啜ろうとした 彼が不思議そうに目をあげるので 美帆子は いや と慌てて言葉を改める。 「ほら、若い子ってこういうお店のが 馴染みがあっていいのかな~、なんて思って」 コーヒーに軽く口を付けるとカルキの臭いがした。 こんなものを飲んでいるなんて 正成が知ったらやはりいい顔をしないだろう。 「だからこの店を選んだんですか?」 続けて『気なんて使わなくていいのに』と少し笑った。 笑うと右にエクボが出来る人だった。 「やっぱり普段こういった店は行かれないんですね」 そのあとすぐ彼は少し焦ったように 『変な意味じゃないですよ?』とクリっとした目で言われる。 「一目見たときから上品そうでしたし、 ...あ、この店に合ってないとかじゃなくて...!」 必死に訴えてくる姿がなんだか若々しく、 見ていて楽しくなってきて思わず笑ってしまった。 「私、なんにも言ってないわよ」 カップをソーサーに置くと薄っぺらい音が鳴る。 「それに あなたの言っている事 間違ってないし」
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加