Ⅰ ~美帆子side~

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周りを見渡しても レポートに追われてる学生や 時間を潰してるサラリーマンしかおらず 私のような身なりをしてる人など一人もいない。 だからある意味 場違いなのだ。 「若い頃はよく来てたかな。 でも結婚してからは一度も来ていないかも」 「一度も?」 驚いた表情に私は そう と笑って頷く。 「主人がいい顔をしないのよ」 彼は へぇ と意外そうな声を漏らした。 「ってことは 今日は...」 語尾をためる彼に私は微笑んだ。 そして、 人差し指を自分の口元に持っていく。 そのサインに彼は にっと悪戯そうな笑みを浮かばせた。 「じゃあ、僕を共犯者に選んでくれたんですね」 軽く身を乗り出す彼からは若い匂いがした。 そんなものを嗅いだのはいつぶりなんだろう。
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