Ⅰ ~美帆子side~

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お金だけ置いて帰ればいいとまで考えていたが その心配は全く無用でむしろ楽しんでいた。 一日のほとんどを家で過ごし続けている 私からしたら 若い男性の口から出てくる外の話題は とても新鮮で、面白いものだった。 「いいんですか?僕の話ばかりになってしまってて」 照れたような困り顔をする彼は 頼んであげたナポリタンを平らげていた。 私は食べ物の代わりにもう一杯コーヒーを頼んでいる。 「いいも何も 私があなたのお話を聞きたいんだから」 すると『そうですか』と嬉しそうに笑い また自分の話を始めてくれた。 というより、私が質問ばかりしているのだ。 彼は大学に通ってはいるものの 結構サボってバイトに行くのも多いそう。 今のように女性と会うボーイズクラブのバイトの前は DVDレンタルショップで働いていたと言った。 「でもあれですよ、今の時代ほとんどネットなんで お店すっごく暇なんです」 「そうね。だって、ここもネットだものね?」 自分と彼の間を指で行き来させると 『その通りです』と彼は自慢げに笑った。
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