Ⅰ ~美帆子side~

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それから私は一度お手洗いに席を外した。 お世辞にも広いとは言えない洗面所で 手を洗い、ハンカチで拭く。 ふっと前の鏡に映る自分の表情は軽く、 若い頃を少し思い出した。 何もかもが自由で縛りなど無かったあの頃。 かと言って今が不自由だとは思わない。 お金には余裕があるし、 正成は難しい所もあるかもしれないが こちらが少し気を利かすだけで何も問題はない。 そのはずなのだが、 何かが美帆子の首をわずかに傾げさせる。 こうして知らない若い男性と会って外の空気を 吸っているせいだろうか。
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