Ⅰ ~美帆子side~

20/27
前へ
/147ページ
次へ
席へ戻ると若々しい瞳で迎えられた。 「ごめんなさいね 席を外してしまって」 再びコーヒーに唇だけをつけてみると もうぬるくなり始めており 私は口に含まずカップをソーサーに戻した。 「あの、美帆子さん お花が好きなんですか?」 不意打ちな発言に目を上げると 彼が興味ありげにこちらを覗いていた。 「.....どうして?」 と聞き返してみると 「僕、人より鼻がいい方で 美帆子さんからたまに花の匂いがするんです。 ......だから、そうかなぁって、」 と返ってきた。 間違ってたらごめんなさい と眉を下げる彼に 私は笑って首を横に振る。 気づかれるなんて思ってもいなくて つい頬が緩んでしまったのだ。 「驚いちゃった すごいのね。 実はお花屋さんに寄ってきた後なの」 「そうなんですね。 じゃあ、僕の予想は当たりましたか」 私はこくんと頷く。 「えぇ、お花は好きよ」 すると彼が小さく よっしゃ と少年のように笑った。 その笑顔を美帆子は素直に可愛いと思った。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加