Ⅰ ~美帆子side~

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テーブルの下で腕時計を確かめると 13時を丁度過ぎたところだった。 「あのね 最後に付き合って欲しい所があるの」 若い瞳を覗き込む。 彼は笑顔で もちろんです と返事をしてくれた。 「...と言っても、 ただお花を受け取りに行くだけなんだけれど」 私は伝票を片手に立ち上がる。 続けて立ち上がった彼と並んでみると 正成より5cmほど高いような気がした。 きっと180cmを超えるかどうかといったところだろう。 合計2000円もしない支払いを済ませ店の外に出る。 「ごちそうになりました」 彼がぺこっと小さく頭を下げた。 撫でてやりたくなるような頭だ。 「律儀(りちぎ)ね 全然いいのに」 こっちよ と先頭を歩き出す。 先ほどのようにタクシーを使っても良いのだが 何故か彼と並んで歩きたくなってしまったのだ。 彼は私の左を歩く。 それはさりげなく車道側だった。
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