Ⅰ ~美帆子side~

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「いいえ、 ちょっと呼んでみたくなっただけです」 そう優しく笑いかけられて 彼は何事も無かったように再び歩き出した。 その若者らしい角張った背中を ほうっと眺め 私は はたと気が付いた。 自分の頬から静かに一筋だけ伝っていたのだ。 それを拭われた左頬は男の熱を しっかりと感じ取っていた。 でも、頭によぎった感情は一瞬で 何の涙なのかはよく分からなかった。
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