Ⅰ ~美帆子side~

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「ごめんね 待たせちゃって」 先に店を出ていた彼に歩み寄る。 私は自分のテーブルフラワーとは別に もうひとつ紙袋を持っていた。 「今日は ありがとう。 あなたと過ごせてよかったわ」 彼は嬉しそうに頷く。 少し照れているようにも見えた。 そんな彼に微笑みながら バッグから何も書いてない 白無地の縦封筒を紙袋に添えて渡した。 封筒の中は4時間分の4万円。 「そっちは ちょっとしたお礼よ。 貰ってくれると嬉しい」 と言うと 彼はすかさず紙袋の中を覗き ぱっとこちらを見て嬉しそうな表情をした。 「これさっきの!」 そう彼が言いながら 大きな手のひらに乗せたのは 私のより、ひと回りだけ小さなサイズの テーブルフラワー。 私は大きく頷く。 「ええ。 最後に 何か似合う物 をプレゼントしたかったの」 先ほど急遽オーダーして作ってもらったのだ。 色味は全体的にブルーでまとめられており アクセントには真っ赤なミニ薔薇が添えられている。 男性が持っていても浮かず、むしろ映えるデザイン。 私のは生花だが、 彼のは手入れの必要がほとんどないプリザーブドフラワーにしてもらった。
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