Ⅱ ~ショウside~

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* 美帆子さんと別れ 渋谷の中心部からほんの少し離れた雑居ビル のエレベーターに乗り込んだ。 さっき頂いたばかりの紙袋を左手に持ち替え 『B2』のボタンを押す。 独特の浮遊感に苛まれ気分が悪くなる直前で エレベーターは到着した。 狭苦しい箱から出て、10mほど先の一番奥にある BARの重たい引き戸を開ける。 掛かっていた看板はまだCLOSEと書かれていた。 「戻りました ショウです」 ダウンライトしか付いていない薄暗い店内に 声が響く。 室内は若干暑く、着ていた薄手のジャケットを脱いだ。 酒とタバコの匂いが染みついている壁。 全体的に黒基調なのに ソファーやスツールだけが真っ赤な革素材。 何度かここを訪れているが その度に『白』という色があるのを 忘れてしまいそうになる。 その反動で咄嗟に思い出されたのは 美帆子さんの姿だった。 ここの雰囲気とはかけ離れた まっさらで純粋無垢なイメージのせいかもしれない。
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