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正成はIT企業の経営者。
都内には当然オフィスビルもある。
普段 正成はそのビルで仕事をしているが
よく経営者同士の集まりで他県に行く事も多いのだ。
「そう、分かったわ。
気をつけて行ってらしてね」
立ったままコーヒーをひと口飲む正成に
私は笑顔を見せる。
これから仕事とはいえ
夜は知らない女性と過ごすのなんてもう分かりきっていた。
半分はプライベートのようなものなのだ。
そうだと分かっていながら笑顔で送り出すなんて
とんだお人好しなのかもしれないと
自分ながらに感じる時がある。
でも、もうそれは仕方ない事なのだ。
今さら彼を突き詰めて正そうとは思わない。
正そうとした所で何も変わらないし、
夫婦の関係をわざわざ居づらいものにはしたくない。
周りからも
「美帆子はいい旦那さん見つけたよねぇ」
とか
「会社経営者なんて羨ましすぎる」
だとかを散々言われ続けているから
そのイメージも壊したくない。
黙って知らないふりをしているのが一番楽な事を私はすでに知っている。
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