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そのまま固まっていると
「あら、まさかのビンゴ」
と杏香さんが口をきゅっとすぼめた。
慌てて いやいやそんなはずは と弁解しようとしたが
杏香さんに ストップ と言われてしまった。
「否定するのはどうかしら。
それは彼女の魅力を殺してるも同然よ」
あ然としている僕を見上げ
杏香さんは鼻で笑った。
「何も悪いだなんて言ってないでしょう。
自分のお客に恋心?いいじゃないの別に」
なんでもお見通しといったような視線に、
身ぐるみを剥がされている気分だった。
瞳からこちらの事を完全に面白がっているのが伝わってくる。
一度しか会っていない自分のお客に惚れている?
心の底から まさか と本当に思ったが
杏香さんにそう突かれて
自分の体に熱い血の巡りを感じた時を思い出すと
否定など出来ない。
実際、鼻腔の奥には
美帆子さんから香った上品な香りが
さっきからずっと残って離れない。
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