Ⅱ ~ショウside~

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「あなたが誰を好きになろうが 仮にお客と付き合おうが構わない。 私、雇った男の子に干渉は一切しないの。 仕事に支障が出ない限りね」 それまでじっと見つめられていたが ふいと逸らされる。 そして杏香さんは組んだ足を解いて立ち 今度はテーブルに小さめな尻を付けた。 再び目が合う。 さっきの面白がっていた瞳とは少し違い 真面目な瞳を向けられた。 「でもお客なんて止めておきなさい。 本気になって辛いのはあなたの方よ」 落ち着きのある声に鋭さを感じる。 「本気...」 そう呟く僕を杏香さんは無視するように ピンヒールをコツリと鳴らしてテーブルから離れる。 そして去り際に2万円を僕の手へ握らせた。 レース越しでも感じる手の冷たさが 杏香さんをより謎めいた存在にさせる。 「予約が入り次第 また連絡するわ」 それだけを言い残し 杏香さんはこちらを見ようともせずに 暗幕の奥へと姿を消していった。 再びしんと静まり返った店内は このビル内で誰もいなくなったのではないかと 疑いたくなるほど人の気配がなくなっていた。
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